狂王の庭 (角川文庫)のレビュー
わかっているけどやめられない、それが恋
旧華族に嫁ぎ、何不自由ない生活をしていた一人の女が夫のいとこに盲目的に慕われ、心ではいけないとわかっていながら、その愛と情熱におぼれていく。
男は妹の婚約者となり、罪悪感と背徳を感じつつ、表面的には周囲に平静を保ちながらも、逢瀬を重ねていく。
男のモデルはバイエルン王ルードビッヒであり、彼さながらの行動は周りには狂気の沙汰としか思えない、しかしその根底には深すぎるヒロインへの思いがあったのを誰もしらない。
又、いけないと思いながらもどんどん惹かれていき、そして関係が終わりになった後の心の揺らぎや女としての思いが非常に見事に描かれていて、最初は「妹のことを考えたらどうしてこんな行動ができるのか」と思っていたのがどんどん私の気持ちはヒロインに同調していってしまった。
テーマや構成としては決して目新しいものではない。
「マディソン群の橋」と同じように、故人の思い出の品が発見されて、その人の秘められた過去や思いが明らかにされる。というものの、その美しく豊かな語り口は作者の力量を非常に感じた。世界のベストセラーとなった「マディソン・・・」より上だと私は思う。
男は妹の婚約者となり、罪悪感と背徳を感じつつ、表面的には周囲に平静を保ちながらも、逢瀬を重ねていく。
男のモデルはバイエルン王ルードビッヒであり、彼さながらの行動は周りには狂気の沙汰としか思えない、しかしその根底には深すぎるヒロインへの思いがあったのを誰もしらない。
又、いけないと思いながらもどんどん惹かれていき、そして関係が終わりになった後の心の揺らぎや女としての思いが非常に見事に描かれていて、最初は「妹のことを考えたらどうしてこんな行動ができるのか」と思っていたのがどんどん私の気持ちはヒロインに同調していってしまった。
テーマや構成としては決して目新しいものではない。
「マディソン群の橋」と同じように、故人の思い出の品が発見されて、その人の秘められた過去や思いが明らかにされる。というものの、その美しく豊かな語り口は作者の力量を非常に感じた。世界のベストセラーとなった「マディソン・・・」より上だと私は思う。
求めること、求められることのせつなさ
単純に恋愛小説を求める人には、私は小池真理子さんの「欲望」がよかったと言うのですが、これは「大人の恋愛」というか・・・既婚者でありながら独身の人から求められた経験がある女性には読んでほしいと思う。ただ単に遊びや浮気を求める関係ではなく、真剣に求め合った経験がある人に。
青爾のまっすぐな杳子への思い、青爾が杳子に放つ言葉のひとつひとつ、既婚でありながら青爾への気持ちの変化を抑えきれずに突き進む杳子の変化。二人の間で交わされる会話のすべてが、行動のすべてが、ただの小説の中の出来事とは思えない。小池真理子さんはすばらしい表現力でこの小説を完成させていると思った。
青爾のまっすぐな杳子への思い、青爾が杳子に放つ言葉のひとつひとつ、既婚でありながら青爾への気持ちの変化を抑えきれずに突き進む杳子の変化。二人の間で交わされる会話のすべてが、行動のすべてが、ただの小説の中の出来事とは思えない。小池真理子さんはすばらしい表現力でこの小説を完成させていると思った。
禁断、悲劇……それ以上の純粋が、そこに、ありました。
舞台は華族がまだ優雅に踊れる時代でした
優艶な美と廃頽を求めた青年が
その青年の死を受け入れ、大きな戦争を乗り越え
裏切り続けた夫と死に別れた後
年老いた背をすっくと伸ばした主人公がふと求めたスケッチブック
持てる財を全て傾け精神を綻ばせた彼との日々を
見られてはいけない、だから書くのだと舐るように字を綴る主人公
物語の初めは主人公の死後から始まります
そんな母が最後にゆるゆると笑いながら大事だ物だが忘れてしまったと
ふとした、偶然により厳重に戒められた包みを手に取る娘
娘から見てもどこか心に静謐を湛えていた母
静謐の奥には若き母と青年と聖獣が住まう失われた緑濃い狂王の庭
自身生まれた事がその庭に、彼に母に。何を齎していたのか
自己嫌悪?汚らわしい?……いいえ、きっと娘は女として母を羨んだのではないでしょうか
羨み賞賛したことでしょう。
その時代、そこにしか存在しない想いをただ、ひたすら純粋に求めた二人を
優艶な美と廃頽を求めた青年が
その青年の死を受け入れ、大きな戦争を乗り越え
裏切り続けた夫と死に別れた後
年老いた背をすっくと伸ばした主人公がふと求めたスケッチブック
持てる財を全て傾け精神を綻ばせた彼との日々を
見られてはいけない、だから書くのだと舐るように字を綴る主人公
物語の初めは主人公の死後から始まります
そんな母が最後にゆるゆると笑いながら大事だ物だが忘れてしまったと
ふとした、偶然により厳重に戒められた包みを手に取る娘
娘から見てもどこか心に静謐を湛えていた母
静謐の奥には若き母と青年と聖獣が住まう失われた緑濃い狂王の庭
自身生まれた事がその庭に、彼に母に。何を齎していたのか
自己嫌悪?汚らわしい?……いいえ、きっと娘は女として母を羨んだのではないでしょうか
羨み賞賛したことでしょう。
その時代、そこにしか存在しない想いをただ、ひたすら純粋に求めた二人を
美
テーマは悲劇。小池真理子の作品自体、悲劇を扱ったものが実に多い。今回は妹の婚約者と恋に落ちてしまった人妻の物語。いかにもドロドロのテーマなのだが、意外と控えめに話は進んでいく。あらすじを読んでかなりのドロドロを期待していた私としては少し物足りなかった。しかしこれで激しくドロドロしてたら三流メロドラマになってしまっていたと思う…。一歩間違えれば笑いを誘うほどのメロドラマを、作者は見事なさじ加減で、美しく、品良く仕上げている。
とにかく「美」にこだわって書かれた作品。タイトルにも使われている「庭」。この庭の描写が美しく、頭の中でその風景を想像し、うっとりしてしまった。基本的にはお気に入りの小説は映画化して欲しくないと思っている人間だが(大抵映画を見てがっかりしてしまうので…)、この作品の映画は見てみたい気がした。この美しい庭を視覚でも楽しんでみたい。
とにかく「美」にこだわって書かれた作品。タイトルにも使われている「庭」。この庭の描写が美しく、頭の中でその風景を想像し、うっとりしてしまった。基本的にはお気に入りの小説は映画化して欲しくないと思っている人間だが(大抵映画を見てがっかりしてしまうので…)、この作品の映画は見てみたい気がした。この美しい庭を視覚でも楽しんでみたい。

単行本 2002
小池さんの恋愛小説、文庫で500ページを超える。いつもながら、状況描写の凄さを感じる作品。モラルや常識という枠組みを十分知っていてなおかつ社会的にもそれなりのポジションにいる人々の非常識とインモラルの対比が綴られているように思う。
そして、過去の強烈なその時代では許されない秘密を持ち続け、死後それが明かされるという流れ。どこかマディソン群の橋を思い浮かべたのは私だけでしょうか?
そして、やっぱり人が死ぬ。小池真理子的恋愛小説の普遍は登場人物の自殺であろうか。